昔愁色・じゃくしゅう色〜帰る場所がある
6年間ほど、再現できなかった昔愁色が本日完成した。
この色が生まれたのは2012年の冬だっただろうか?
師匠・生多良が元気だった冬の寒い日の夕方遅くに生まれた色。
深夜、みんなが寝静まった工房で、竿に左から2番目にかかったこの色を見ながら、
幼い頃、親戚がおばあちゃんのうちに集まる法事の時の光景が浮かんだ。
山里にある祖父の家。
いとこ達、子供達が刈り取られた田んぼで遊びに夢中。
「夕飯だよ」と声をかけられ、温かな灯りの中の賑やかな夕食をめがけて帰る風景。
みんな若くて元気に生きていた。 たくさん人がいた。
夕方の田んぼで燃やす焚き火の煙の香り、夕食の料理の匂い、
懐かしい、その郷愁を身体中に感じた。
帰る場所があると。。。
この色は、その後も、ずっと再現できずにいた。
生多良も苦戦して挑戦するが、ずっと生まれなかった。
ずっと私の瞳の中にあった色。
ここ数日、色に囚われ、どう生きていたか?わからない日々の中。
今日で色を染めることに節目をつけて、明日から色止め仕上げの工程に入ると決め、
最後に染めた時に生まれた。
あの日の寒い夜を思い出した。
寒いけれど、穏やかで温かな師匠の生多良家での笑い声が絶えなかった食卓。
昔愁色を抱きしめて涙した。
この色は、いつも帰る温かな場所へと連れて行ってくれる。
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