橋掛り


今日は、極上麻を染めた。

麻の繊維をありえない程の細さに撚り、ごく薄く透ける麻のストール布地。

今までは、白泥染めだけを施していたストール布地。

白泥染めは、白大島紬、色大島紬の文化度の高いもの、高級なものだけに施されていた

特別な染め。特別な染めが似合う極上麻の布地。


waka-nuditéとなり、表現の幅を広げたい。この布地で風を染めたい。

そう思い、極上麻を染め始めた。

極細の繊維、極上の薄さの布地は、通常の染めでは糸がずれてしまうので通常の倍の時間を

かけて染めてみる。体力勝負。色々な染め方で試行錯誤。



思い起こせば、好きな色の靴が見つからず靴を染め始めたのが中学生の頃。

それから趣味で染め始め、大学で染めを少し勉強して、師匠の大島紬染色家・生多良と出会い、

大島紬を、師匠の色を後世に残そうとumu-wakaを始める時、染めの言葉を師匠と合わせようと

京都まで染めを習いに行き始めた10年前。そのプロセスが、今の私のお道具箱を豊かにしている。


そして

普通では見ること、出会うことが難しい日本の色、職人の色、大島紬のピンの世界を

過ごすことができての今。

こうして色を生み出すためにあった年月、人生であったように思う。

そんな月日に感謝しながら、染めたストールを洗い終え

ストールを干そうと外に出ると夕方になっていた。


西の空の夕のグラデーション。川面に写る夕空のグラデーションの美しさ。

夜迎色(やむかい色)は、このグラデーションの1色を取り出して染めたけれど

この美しさは自然の神様にしか誂えることができないな。

刻々と色の表情を変える夕刻のステージ。



この美しい西空と並行して、東の空には大きな月が、すでに上がっていた。

日付をまたいで12月4日午前0時44分に満月。

今年最後のスーパームーン。


西の空は、この満月の舞台を前に、一つの章を美しく締めくくるショーを美しく奏でているよう。

その舞台を覗きながら、新しい章を伝達する満月が待っているように感じた。



長かった2017年。速攻で過ぎて行った2017年。

新たな調合と染め方で、waka_nuditéの色を、1から作り始めた2017年。

満月を前に、新しい素材を染め始め、安定してきたこの仕事景色。

新しい幕が始まる。私の真の仕事が始まると。

満月を前に、能の舞台前の橋掛りにいるような感覚がしている。



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